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山元町産 伊達むらさき    (金時草)


by tyama2001

「郷土の歴史を遡って知ろう!」 (第8号)



亘理郡の農業(その2:減反への道)

 昭和40年頃から稲作バブルともいうべきことが起きた。戦後、政府は米の増産を奨励しあらゆる施策を行った。米価も上昇を続け、逆ザヤと言われることまで起きた。農家からの買い入れる米の価格が消費者への販売価格を上回るようになってしまった。
 米価は永遠に上がるのかと思うような状態だった。農林族と言われるような議員もたくさんでてきた。農家も団体で東京に押し掛け国会周辺をデモするのが恒例になった。ところが、デモを終え昼食に農家の人たちが、ラーメン屋さんに入るのである。農家自体が米を食わなくなったと揶揄された。米離れが加速していた。
 発端は終戦直後の食糧不足の時に占領軍がガリオア・エロア援助で、麦粉が大量に入ってきたことにある。パン食が始まった。パンを食べることがハイカラに思えたのである。
 小学生にも「日の丸弁当」の栄養補給にと、麦粉と牛乳が渡された、モサモサして旨いものではなかった記憶がある。米の消費のピークは昭和37年の一人当たり113kgで以降は除々に低下している。
 米の増産は国策として、そんなことにはおかまいなしに進んだ。秋田県では当時の面積では日本第二位の湖だった八郎潟の干拓も終わった。
 農業機械の開発も進んでいた。
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稲刈り機械とか田植え機械なども出始めた。初期の頃は単純なものだった。刈りっ放しで田んぼに放置され、後から人間が束ねて行くのだが、それでも大変な省力化だった。機械は高い値段で飛ぶように売れた。
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 亘理に商売上手な農機具屋さんがいて、沢山の売上実績を重ねていた。メーカーからの海外招待旅行があり世界中を歩いていた。その方とお話をしていたら、北欧以外に外国の知らないところはないのですよと言われたのには驚いたものだ。(写真は初期の頃の田植え機械と稲刈り機です)    
 農家の海外旅行もブームになった。「ノウキョウ」の旗を掲げた団体がロンドン、パリへと繰り出して話題になったものである。米価は60kg(一俵)当たり2万円以上をかなりの期間維持し続けた。
 だが、機械の性能が上がると共に機械の価格も大幅に上昇した。
 次々と新しい機械がでるたびに買い替えるので、農機具貧乏などという言葉も出てきた。
 隣近所の様をみて、自分だけが旧い機械ではだめだという意識が働く。日本人同士の巧みな競争心が利用されたのである。農機具を使うのは一年間のうちのわずかな日数のみである。
 農業機械の進歩は、稲作農家を劇的に減少させた。平成30年の亘理郡内では99戸のみになった。そんなことで現在は一戸平均で数十ヘクタールを請け負っているのである。

稲作に欠かせないのが「水」である。用水と排水は昔からの課題であった。亘理郡の海岸地帯は土地が低く、海抜ゼロm地帯も多い。特に海岸一帯では、潮の干満により海水の影響を受ける。このために、牛橋江や鳥の海周辺は、昭和20年代までは芦の生い茂る海水と淡水の入り混じった荒地であった。高屋辺りには沼のようになった水溜まりが方々にあって、魚釣り特にボラが沢山かかった記憶がある。
 この海水浸入地帯を国策として干拓し、一挙に農地化して米の大増産を計ろうとしたのである。昭和27年に始まり、昭和47年に完了する大規模事業であった。皮肉なことにこの頃から米余りが本格化するのである。
 牛橋(河口)の海岸に面したところに大型の水門が完成した。鳥の海と鐙川の接続点には、それまで16樋関と呼ばれた旧式な水門があったが、現在見るような近代的なものになった。
 農地は一挙に拡大し、亘理郡が本気で米を作れば、昔流に言うと15万石もの生産が可能なようだ。
 だが米の需要減少で、農地も徐々に宅地化されていったのである。
 昔は葦原で、住所などはなかったのだが、干拓後には地番が付けられるようになった。住所に人名がついているのをご存じの方も多いと思う。



 当時、功績のあった方々の「姓」がつけられた。すなわち、荒浜の我妻、横山、星、中野である。農協組合長、県会議員、高級農林官僚であった人たちである。

(写真は「たちばな出版」の住宅地図より)(記:鈴木仁)     ――― 次号に続く

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 の資料は、山元町中央公民館、つばめの杜ひだまりホール、ふるさとおもだか館、亘理町立図書館の情報コーナーに置いてあります。手に取ってお読みいただければ幸いです。

by tyama2001 | 2018-08-01 00:00 | 亘理・山元ニュース